まきずし大作戦ブログ
第1巻き「ホンとの出会い」

2005年12月13日

「いっきょんさん!

 風俗を研究してるのに、変態の本もチェックしてないんですか!」

 大学院のD論指導の時間に、教授に叱られた私は、しゅんとなりながら、先生から聞いた『〈変態〉の時代』菅野聡美(講談社新書2005年)という本を探しに、本屋さんに出かけた。

 

そして、そこでたまたま出会った本をきっかけに、すべてが始まった---。

 私は、日本の現代風俗について研究している、あほの大学院生だ。そして、この物語は、私の研究にはあまり関係ない。本当は、学術論文をさくさく学会発表していかなければいけない時期に、私は、ある企画を思いついてしまった。

 これは、その企画が成功するまでの、いわばサクセスストーリーなのである。
といっても、日記として書いているため、先のことはわからない。サクセスにつながるかどうかはわからないけど、とりあえず、やってみる!

 だって、この企画は、在日コリアン3世である私だからこそ、学生である私だからこそ、実現できるんじゃないか!と思った企画だからである。

 

◆◆◆

 変態の本を探しに出かけた本屋さんで、私はあるの本と出会った。新書コーナーへ向かう前に、話題の本として平積みされていたその本。目に止まった理由は、その本屋さんの手書きのポップ---

【これを読むと、必ず韓国が嫌いになること間違いなし!】

「はあ!?」

と思って、手に取ったその本のタイトルは『嫌韓流』山野 車輪(晋遊舎2005年)。ぱらぱらと立ち読みしてみると、漫画なので、すらすらと読めた。しかし、そのすらすらの速度と同時に、私の中にムカムカとざわざわが共鳴するようにわいてきた。

「なんじゃこりゃあ!!」

勢いよく本を閉じた。するとその本の帯が目についた。
【各出版社から出版拒否!衝撃の問題作!30万部突破!】

・・・頭がくらくらした。

 本の内容よりも、こっちのほうがよりズシッとくるものがあった。

 『嫌韓流』はその名の通り、韓国がいや〜な風に書かれている本だった。日韓におけるさまざまな問題を、狭い視野で語っている本だと私は感じた。

 しかし、そんな本はいくらでもあるということもわかっていた。

 何かを実証する時に物事の都合のいい部分だけ抜き出して、立証していくなんて、どこででもある方法だ。でも、こういう本が売れているという事実に、私は何かひっかかるものを感じたのだ。

 ・・・しかし、私がここに来たのは変態の本を買うため!気を取り直して、新書コーナーに向かった。すると…

 

 【嫌・嫌韓流!在日〜】がなんやらかんやらという帯と共に『在日コリアンってなんでんねん?』朴一(講談社2005年)という本が目に飛びこんできた。

 それは、講談社新書から11月に出版された本で、新刊本として、平積みされてた。『嫌韓流』で、嫌な気分になった後だったので、何か救いの言葉があるかもしれないと、私はその本をすぐに手に取り、まえがきとあとがきを読んだ。

・・・その本のあとがきにはこういうことが書かれてあった。

---「本書を書き上げるにあたって、多くの人にお世話になった。(中略)講義のテープ起こしを手伝ってくれた高吉美さんの友情に感謝したい。
彼女の尽力がなければ、本書は完成しなかったかもしれない。」

私は思った。
「このひといい人やわ、助手の人にもきちんと感謝して」

 

---「また本書を企画し、なかなか書こうとしない私をうまく書くように誘導してくれた講談社の木原進治さんには、たいへんお世話になった。
いつの日か売れる本を書いて、彼の友情に応えたいと思っている。」

私は思った。
「このひとあつい人やわ、編集のひとにまで友情感じて」

でも・・・私は思った。

「こっちの本は、どれくらい売れてるんやろか…?」


 気がついた時には、私は『在日コリアンてなんでんねん?』を手に取り、レジに向かっていた。わざわざ買いに来た変態の本ことは、すっかり忘れていた・・・。

〜☆〜

 その日の夜・・・私は本を片手に、自分なりの考えをまとめてみた。

 とにかく、『嫌韓流』の勢いを止めるためには、『嫌韓流』よりも売れる本が必要だ。…ということは、朴先生に、もっと売れる本を書いてもらえばいいのではなか?

・・・おそらく、『嫌韓流』は、漫画であるという時点で、読者数が相当多いなと思った。その中には、もともと韓国をいいように思っていなかった人もいるだろうけど、何も考えてなくて話題の本だからというだけで手にとった人もいるだろう。

・・・でも、どちらにしても、日韓問題に関して知識があまりない人たちがたくさん読んでいて、偏った意識が生まれる可能性がある、という危険性を感じた。

 それにくらべ、『在日コリアンてなんでんねん!』を買って読んでいる人はどんな人だろう?ということを考えたときに、明確だったのは、まず、読者層が相当狭いということ。

 

 ---理由は、新書だからである。

 新書と漫画では、読んでいる人の数も、種類もケタ違いだ。

 実際、書店の新書コーナーはいつもガラガラだ。

 また、『在日コリアンてなんでんねん!』を買う人の多くは、少なくとも在日コリアンに対して知識を深めたいと思っている友好的な人、もしくは在日コリアン自身ではないだろうか…と思った。

 次に私は、amazonという、ホームページで、二冊の本を検索してみた。
amazonは、日本最大級のネット上の本屋さんみたいなもので、本の情報として、本の目次やレビューなどと共に、カスタマーレビューという、読者自身が感想を書き込めるページがある。

 そこで、この二冊の本を読んだ人がどういった感想を抱いたのかを、知りたいと思い、検索をかけてみた。


 すると・・・・

『嫌韓流』カスタマーレビュー数…791件
『在日コリアンってなんでんねん!』カスタマーレビュー数…1件

                       (※2005年12月の時点で)

 

 その圧倒的な感想の数の差もさることながら、感想内容も、私の予想をはるかに上回っていた。

 『嫌韓流』みたいな問題作なら、バッシングも多いだろう!と思っていたのに、バッシングどころか、絶賛してるひとの多いこと多いこと!その上、『在日コリアンってなんでんねん?』のたった一件の感想は、逆にとても否定的なものだった。

これがすべてじゃないけど・・・
せやけど・・・

なんか、やりきれない気持ちになった。

 

・・・・よし!

 
 明日早速、朴先生にアポイントをとってみよ!もう知ってはるかも知れんけど、この事実を伝えて、もっと本が売れるように考えてもらおう!

 

と決めた。そのためには、まだ1章しか読んでいない、『在日コリアンってなんでんねん?』を全部読まなあかんな!

よーし!!!

・・・そうして、全てのはじまりの日の夜は更けていったのだった---。

 
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